概要

外国法の授業・海外インターンシップ

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齋藤 彰

神戸大学法学研究科教授(国際取引法担当)
神戸大学法学部卒
商船三井に勤務の後、神戸大学大学院・アバディーン大学大学院修了
関西大学法学部教授を経て2001年から現職
パリ13大学・ダンディー大学・マレーシア国民大学客員教授

外国法教育

外国法の知識は実務的にも重要になってきています。それは私達の生活や経済活動のグローバル化がもたらした当然の結果といえます。法科大学院で外国法の基礎知識を学んでおけばその法律調査が容易になります。講義を担当する海外の研究者や実務家と知り合いになれば、そのネットワークは将来の皆さんの仕事に直接に役立ちます。

しかし何よりも、日本と海外との法制度を比較するのは楽しいものです。社会生活において人々が遭遇する問題には、世界中で共通のものが少なくありません。そして優れた法律家の思考方法は、国を問わず驚くほど似通っています。具体的な法的対応には地域毎の偏差があるけれども、法律家同士はその違いが意味するものを相互に理解し、それらの比較から極めて多くの示唆を得ることができます。神戸大学法科大学院では、こうした視点から日本人教員だけでなく、海外の研究者や実務家が担当する講義など、多彩な外国法の教育を展開しています。

東南アジア諸法域での海外インターンシップ

神戸大学法学研究科では毎年10〜20名の学生を海外の法律事務所等における1ヶ月以上のインターンシップに派遣してきました。中心となる法域は、マレーシア・インドネシア・ミャンマー・タイ・シンガポール・台湾・中国・香港・韓国等です。

グローバル化した現在の社会における商品の生産は、現在では世界中に張り巡らされたサプライチェーンによって行われ、一国内で完結することはほとんどありません。それはパソコンや携帯電話のようなハイテク商品に限らず、私達が日常的に利用する衣類や百円ショップの商品群などでも同様です。こうしたビジネスを展開する際に国際的な契約(法的拘束力のある約束)は中心的な道具であり、それを適切に締結するには高度の法律的知識が必要となります。そのために法律家達が国境を越えて協力しなければ展開できない法律業務が急増しています。そこで必要となるのは単に英語力や法律情報だけではありません。実際に産業を担うのは各国で生活するさまざまな人達であり、そうした人達が効率的に協力するためのインターフェイスとしての役割を果たす契約を作る必要があります。そのためには各国の社会文化や政治的状況等もしっかりと理解していることが重要となります。

しかし、こうした国際的なビジネスに関する法律業務を担当することができる人材への需要が高まる一方で、日本の大学が伝統的に提供してきた法律学教育ではそうした人材を育てることに限界もありました。それを乗り越えるための鍵となるのが海外インターンシップのプログラムです。もちろんそれだけですべてが解決するわけではなく、外国法科目・海外から招いた研究者による講義・法律英語の教育・企業法務に関するワークショップなどの新しい教育プログラムを神戸大学法科大学院では合わせて提供しています。

インターンシップはそれ以外の多くのことを学ぶ機会でもあります。例えば、国境を跨いで他の国に入ると、日本政府は直接に皆さんを守ることはできません。インターンは報酬は通常もらいませんが、職業的スキルを獲得するために一定の業務に従事するので、それが違法とならないようビザ等の手続が必要となる場合もあります。また、最近の空港ではテロ対策などのためセキュリティが厳しくなる傾向にあり、さまざまな煩瑣な手続が行われます。機械による顔認識を用いたパスポート審査などに慣れていないと、大慌てすることもあります。また、航空機は天候悪化や故障などがあると大幅に遅延したり、予定が変更されたりすることも希ではなく、そうしたトラブルはある意味で避けようがないのですが、経験したことがないと誰もが狼狽します。多少のことには動じないように経験を積んでおくのも、グローバル化する社会で働く法律家にとっての必須事項です。

最近では、海外で仕事をしたいという若い法律家が増加しています。とくに製造業に強みをもつ日本のビジネスの特徴を考えると、現実的な選択肢としてアジア諸法域で働く機会が多数を占めます。しかし実際にアジア諸国は生活環境において極めて多様であり、たった数日間東南アジアのある都市に滞在しただけですぐに日本に帰りたいと思う人は少ないとはいえません。若い人達には適応能力がありますが、感じ方や価値観には個性があり、住む場所の環境との相性もあります。1ヶ月間その場所でインターンを経験すれば、そこで自分が仕事をしながら楽しく生活できるかどうかの判断はより現実的で確実なものとなります。またいずれにしてもアジアの主要都市に馴染みがあることは、将来出張などでそこを再度訪れる際には懐かしくもあり、インターンの時に知り合った人達との再会も楽しむことができるでしょう。

このように海外でのインターンシップはこれから法律家として活躍するために法科大学院生の間にぜひ経験しておくべきものです。神戸大学法科大学院では、そのためにアジア各国の優良な法律事務所との連携を促進し、希望者全員を適切なインターンシップ先に派遣できる体制を十年がかりで構築してきました。現在では、このインターンシップでの経験を活かして多数の修了生が国際的な法律業務で活躍しており、そのネットワークを活かせることも神戸大学法科大学院の大きな魅力です。

参加者の声

中山 貴博

弁護士法人大江橋法律事務所 弁護士
神戸大学法学部卒、2011年神戸大学法科大学院修了。
司法修習生(65期)を経て、現職。


私は、2011年6月から9月までの約3か月間、マレーシアインターンプログラムに参加しました。私は、このインターンが非常に素晴らしい制度であると確信しており、ここでは、参加者として、皆様にこの制度の魅力についてお話させていただきます。

現地では、各弁護士から様々な課題が提供されるのですが、そのいずれもが刺激に溢れるものばかりでした。ある弁護士は、「分かるまで議論しよう、法律も英語も分からないことは一緒に調べよう」と言い、彼とは長時間にわたり議論をしました。また、事務所のボスから出された課題が難しくて困っていたところ、他の弁護士がヒントをくれるという一幕もありました。他にも、M&A案件のキックオフミーティング等の会議又は裁判所における期日に同席するなど、これらはほんの一例にすぎず、彼らは常に親切で、忙しい中我々に時間を割いてくれました。

また、弁護士のみならず、多くの職員が惜しみなく時間を共にしてくれたお陰で、食事や旅行に何度も行くことができました。

これらの経験は、法律知識や英語能力の涵養のみならず、外か日本を見ることや、難しいことを簡単に伝えることの重要性を再認識する契機となる等、様々な形で今の私の糧となっています。また、今でも交流が続く多くの友人ができたこともかけがえのない財産です。

実務家になってから、海外にてインターンを経験するということは非常に困難ですが、神戸大学LSでは、インターンへのアクセスが確保されており、これほど恵まれた環境は類を見ません。

皆様が、神戸大学LSで充実した生活を過ごされるとともに、マレーシアインターンプログラムを通じて飛躍の機会を得られることを心より祈念しています。

国際商事仲裁

国際商事仲裁は、国際ビジネスにおける標準的な紛争解決方法として定着してきました。しかし、日本企業はそれを十分活用することができておらず、それは日本企業の国際競争力にも影響を与えかねない深刻な状況にあります。神戸大学は、国際商事仲裁・投資協定仲裁の研究教育の日本における拠点となるべく、仲裁の実務経験を有する外国人教員を確保するとともに、海外の有力な仲裁法律家や世界中の仲裁機関とのネットワーク作りに取り組んできました。

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