村上 若奈 さん
第5期修了生
東京地裁立川支部 裁判官
ご経歴
2010年3月 神戸大学法科大学院修了
2010年9月 司法試験合格
2011年12月 司法修習終了(新第64期)
2012年1月 判事補任官 奈良地裁判事補
2015年4月 東京地家裁立川支部判事補・立川簡裁判事
村上 若奈 さん
第5期修了生
東京地裁立川支部 裁判官
ご経歴
2010年3月 神戸大学法科大学院修了
2010年9月 司法試験合格
2011年12月 司法修習終了(新第64期)
2012年1月 判事補任官 奈良地裁判事補
2015年4月 東京地家裁立川支部判事補・立川簡裁判事
神戸大学法学部を卒業後、神戸大学法科大学院に未修で入学し、2010年に卒業して同年に司法試験に合格しました。そして、修習後2012年の1月に任官しました。初任地は奈良でしたが、立川支部には2015年から勤務しています。
まず、法曹になろうとした動機をお話しします。
私は高校生の頃、外国語学部にも興味がありましたが、何か専門知識を身に付けたく将来のことも考えていわゆるつぶしがきくといわれる法学部へ進学しました。そこで、法律の勉強を始めたら、これが楽しくて自分に合っていると感じました。ちょうど、私が大学に入った頃にロースクールができて、新司法試験が始まり、司法試験に受かりやすくなると言われていた時期でもあったので、じゃあ目指してみようというのが理由です。
次に、裁判官を目指そうと考えたのは法科大学院入学後になります。当時、大学院にいらっしゃっていた実務家教員の方が、とても良い方で授業もすごく分かりやすく、お話をしているうちにこれまで遠い存在だと考えていた裁判官をとても身近に感じることができ、裁判官という職業に興味を持つようになりました。その後実際に修習で、いろんな裁判官の方と接しているうちに、裁判官は受動的な存在ではなく、中立的な立場から積極的に当事者の主張立証を整理し訴訟を進行していく存在であるということを理解し、そこに大きな魅力を感じたので、裁判官を志すようになりました。
まず、一般的な事ですが、裁判官になると5年目までは、未特例判事補 として、主に3人の裁判官で担当する合議事件の左陪席として裁判に関与します。そこでの主な仕事は、期日メモ作成や判決起案です。さらに6年目からは特例判事補として、単独でも事件を担当できるようになります。そして10年経過後、判事になります。
私は今、5年目の未特例判事補で、民事部の左陪席として民事事件に関与しています。具体的な一日の過ごし方は、民事部と刑事部で多少違いがあるかと思います。刑事で裁判員裁判がある場合には期日が集中的に行われるため、丸一日その事件に関わることになり、それ以外の日も公判前整理手続を行い、その事件の打ち合わせを行います。民事の場合は、開廷日は公開の法廷で尋問手続などを行います。それ以外の日は、弁論準備手続などで当事者と主張整理を行います。期日に入る前には、その事件の争点の整理や関連判例のリサーチをした上で、当事者の主張を整理し、次回どのように進めるかということのメモを作成し、合議体の他の構成員に渡して打ち合わせを行っています。そして、このような打ち合わせ等を通じ、右陪席の裁判官や裁判長から、事件の処理の仕方を学んでいくというのが、未特例判事補の仕事のながれということになります。
※判事補とは、任官して10年未満の裁判官の官名です。原則として1人で裁判をすることができません。ただし、実務経験が満5年を超える判事補は、特例判事補として指名されると、一人で裁判を行うことができます。他方、特例のついていない5年未満の判事補を未特例判事補と呼ぶことがあります。
様々な事件がある中で、積極的に当事者の主張を整理して判断を下していくというプロセス自体が裁判官のやりがいだと考えます。もっとも、それが難しい事件もあって、裁判官という仕事の難しい点でもあります。
具体的に裁判官をやっていて、喜びを感じるのは、当事者間で和解が成立したときです。やはり判決は、どちらか若しくは両方の当事者に不満を残すことがあり、任意の履行を期待できないことがあるという一面があります。他方で、和解ということであれば、両当事者が納得した上で、合意して事件を終了させるため、任意の履行にも期待ができ、当事者のためにもなると考えます。そのため、和解による解決が望ましいと判断した事件では、積極的に和解案を提示し、和解のための努力を裁判官も行います。
法的な素養があるということは前提として、コミュニケーション能力は法曹三者のどの職業においても重要だと思います。このコミュニケーション能力とは、誰とでも仲良くする能力というものではなく、相手の話にちゃんと耳を傾けて、自分の伝えたいことを正確に伝えることのできる能力です。例えば裁判官が、刑事で裁判員裁判を担当した場合、評議の際の裁判員の方とのコミュニケーションは重要ですし、民事で当事者に納得してもらうためにも、どういう表現をすれば自分の言いたいことを正確に伝えることができるかという意味で、コミュニケーション能力は重要です。
もう一つ、法曹として仕事をしていく上で、積極性も重要だと思います。例えば、弁護士が書面を作成する際に、どこまでリサーチをし、証拠集めをするか、といった場合に、積極的に行動し、十分に調査され、作成された書面であれば、裁判官としてもありがたいです。仕事をするなら、どんどん積極的に動いていく方が、上手くいくでしょう。
コミュニケーション能力や積極性というものは、個人の資質が大きく関係するところもありますが、法的な素養、特に法的思考能力というものをじっくりと養成できたのは法科大学院でした。現在、裁判官として仕事をしていても、そうした法律における基本的なものの考え方は生かされていると感じています。また、法科大学院において模擬裁判などの実際の手続が学べる授業があれば、ぜひ積極的に参加すべきです。こうした授業は、司法試験の論文試験と直接リンクしませんが、法律の仕組みというものを理解するために実際の手続とともに学ぶということは非常に有用ですし、実務でも当然重要です。
まだ、漠然としたものですが、来年、特例判事補として指名されることに備え、単独で事件を処理できるようになることを第一目標としています。また、民事刑事と経験をしてきたので、家事事件を担当してみたいですし、娘もいるので家庭の時間というものも大切にしながら経験を積んでいきたいです。
現時点で、自分の専門分野が固まっているわけではないので、今後も仕事を続けながら自分のやりたい分野というものを探していこうとは考えています。
最近は弁護士の就職難など、法曹にとって厳しい情報も広まっていますが、法曹はやりがいにあふれたすばらしい職業であり、社会から常に求められている存在でもあります。ぜひ、法曹の道を目指してみてください。
インタビュー実施日:2016年6月17日
インタビュアー及び記事編集者:橋本 康平