大学院の歩み

金融庁への出向 ~専門性あるジェネラリストになるために~

岡﨑 頌央 さん

第12期修了生
弁護士法人御堂筋法律事務所・弁護士


ご経歴
2015年3月 神戸大学法学部卒業
2017年3月 神戸大学法科大学院修了
2018年12月 司法修習修了(71期)
2019年1月 弁護士法人御堂筋法律事務所入所
2020年10月 金融庁総合政策局(任期付公務員として出向中)


法曹を志望された理由を教えてください。

大学入学後、所属した法律相談部の活動を通して、法律を勉強することや、法律の知識をわかりやすくアドバイスすることの楽しさを感じ、法律の知識で依頼者にアドバイスをする弁護士という仕事に興味を持つようになりました。また、法科大学院に入学する頃に、父が会社との雇用関係で悩んでいたことがあり、社会は法律の原則通りには回っていないと感じました。物事が法律の原則通りに進まないことはままありますが、そのことにより困っている人がいるのであれば、その不合理を正し、人の助けになりたいと思い、より弁護士という仕事に関心を抱くようになりました。

早期卒業をされたことに関するご経験、実務で役に立ったと感じる法科大学院在学中のご経験を教えてください。

もともと、学生時代は制約が多くどうしても活動領域が狭いため、できるだけ早く社会に出たいと思っていました。そんな折、学部2年冬の授業中に、早期卒業制度が始まるというお知らせがありました。運よく要件を満たせそうだったため、早期卒業に挑戦しました。早期卒業の事実自体は、実務において話題になることはほとんどありませんが、就職活動における話題作りでは一つの武器になりました。現在は金融庁に出向していますが、その際の面接でも一瞬話題になりました。

また、法科大学院の授業で教えられる法律の仕組みや理屈というものは、「思考の流れ」を身に着けるために重要であり、身についた「思考の流れ」は、実務に出てからも、法務リサーチを行う場合、案件の法律構成等を検討する際に活かされています。

その他、神戸大学の教授からはとても親身かつ熱心なご指導を受け、恩師とも呼べるような先生に出会えました。加えて、やはり同じ目標のもと、苦楽を共にできる友人ができたことは人生の財産になりました。法科大学院時代の友人とは今でも交流があり、一生涯の出会いになったと思います。

就職活動をどのように進められましたか。また、所属事務所を選んだ理由をお教えください。

法科大学院に入学したときから、就職について意識はしていました。2Lの頃は夏休みに事務所訪問に行ったり、「法務・法律求人サイト アットリーガル」に登録してタイムリーに就職情報が得られるようにしたりしていました。3Lの夏休みには東京大阪を中心に6つから7つの事務所のサマークラークに参加しました。法科大学院修了後は、大阪の事務所を中心にサマークラークに参加しました。

御堂筋法律事務所を選んだ理由については、一言でいうなら「縁」だと思います。就職先を選択するにあたっては、なるべくいろんな仕事ができること、比較的大きな仕事・事件にも関わることができること、人間関係や雰囲気が良いことを重視していました。御堂筋法律事務所はこうした希望に合致しており、かつ、出会った弁護士全員が魅力的で、パートナーとアソシエイトとの関係性も好ましかったこともあり、3Lの夏休みのサマークラーク時点でいい事務所だなと感じており、かなり志望度は高かったです。このように自分が好ましく思っていた事務所から、ご縁があって内定をいただけたので、御堂筋法律事務所に入所することを決めました。

所属事務所でのお仕事のご様子をお教えください。

御堂筋法律事務所は企業法務のイメージを持たれがちですが、実は「法律なんでも屋」なんです。なので、法分野では、労働法、破産法、特許法、著作権法、会社法、一般民事など、業務分野では、訴訟、交渉、ファイナンス、契約書レビュー・作成等、とにかく幅広い分野の仕事をします。相続や離婚といった身近なトラブルから、大きな企業のトラブルまで担当します。余談ではありますが、私はなぜか一般民事のうち、男女間のトラブルを受け持つことが多く、1年半で10数件の事件を担当し、パートナー弁護士に驚かれました。

1日の流れについては、おおむね8時から9時の間に出所し、日中はメールや電話でのやり取り、打ち合わせ等、人とのやりとりが必要な仕事をします。夕方以降は、訴訟・陳述書・内容証明郵便等の起案やリサーチ等、腰を据えてやるべき仕事をします。担当する案件数は時期により変動しますが、私が出向する際に担当していた案件は約200件程度あり、自分でも驚きました。引継ぎが大変でしたね。

金融庁への出向の経緯と金融庁でのお仕事のご様子をお教えください。

一度は事務所の外の世界も見た方がよいのではないかと思っていたところ、入所から2年と数カ月の頃に、事務所から金融庁に出向しないかとの打診を受けました。入所2年目の間に出向というのは少し早い気もしましたが、もともと事務所内の金融法勉強会に参加していたこともあって金融法務には興味があり、早めに専門性を身に着けるのもよいと考え、出向することを決めました。

私は現在、金融庁で、主にマネー・ローンダリング(以下「マネロン」といいます。)及びテロ資金供与対策を行っています。マネロンとは、ごく簡単に説明すると、悪いことをして得たお金を、金融機関等を通じてきれいにして隠す行為をいいます。

普通に生活していると、マネロン、ましてやテロの脅威はなかなか意識しづらいかもしれません。しかし、例えばオレオレ詐欺等のいわゆる特殊詐欺の被害額は、年間300億円にも上っており、こうして詐取された金額の多くが、金融機関等を通じて、隠されたり、海外に移転されたりしています。こうしたことを防ぐ機能があるのが、金融機関等による本人確認手続や、取引の監視です。私の所属部署では、金融機関にマネロン・テロ資金供与の防波堤になってもらうため、「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与に係るガイドライン」に沿った対策ができているかという観点から、金融機関への監督・指導を行います。このほか、ガイドラインの改正や、今年新たに公表されたガイドラインのFAQの作成に携わっています。マネロン・テロ資金供与の手口は、悪い意味で日進月歩で、ムービングターゲットとも表現されています。このほか、マネロン・テロ資金供与対策に関しては、上述したガイドライン以外にも金融実務も含めて様々な知識が必要になるので、今でも、日々勉強しながら業務に励んでいます。金融機関と金融庁の監督・指導という関係は、依頼者と弁護士という関係とはまた違った形であり、興味深く感じながら仕事をしています。

お仕事に対する将来のご展望をお聞かせください。

金融庁への出向の経験を生かして金融系のお仕事に関わり、専門性を伸ばしていきたいです。特にマネロン・テロ資金供与対策については、ガイドライン等ルール作りに携わったという経験があるため、ここで得た知見はぜひ今後の仕事に役立てていきたいと思います。さらに、金融機関でのデータ情報の取り扱い・システムの構築についても興味があるので、そのような仕事がしていけたらと思います。御堂筋法律事務所は様々な分野に取り組むことができる職場ですので、ジェネラリストとして、裾野は広く、しかし専門性のある弁護士として、活躍していきたいと思っています。

差し支えなければプライベートのお過ごし方をお聞かせください。

事務所にいたころは、散歩やゴルフをしていました。ゴルフは職場の人ともよくいきました。金融庁に出向してからは、勉強をしていることが多いです。

法科大学院生及び法科大学院に入学を考えている後輩へのメッセージをお願いします。

現在は、法律家を目指す人自体が少なくなってきていると思います。そんな中、誰もが合格できるわけではなく、いつまで苦しみが続くかわからない道を皆さんは選びました。今は歯を食いしばって、やる気を振り絞って頑張ってください。その過程が苦しい分、法律家になってからの楽しみは大きいです。法律家の仕事は、普段関われないようなたくさんの人と関われることで、自分自身を成長させることができますし、業務を通じて知的好奇心が刺激されます。また、仕事で人から感謝されることも多く、やりがいがあります。ドラマチックで素敵な人生を自分の力で手に入れられる職業だと思いますので、つらいかもしれませんが、どうか今は頑張ってください!

また、神戸大学の法科大学院生はもっと在学中から就活を意識してもいいと感じます。就活を通して働いている自分の姿を想像できますし、その方が勉強のモチベーションアップにもつながると思います。ぜひ事務所の説明会やサマークラークにも積極的に参加してみてくださいね。そして、もしよろしければ、御堂筋法律事務所の説明会やサマークラークにお越しください。このインタビュー内容が少しでも皆さんのモチベーションアップにつながればと思います。

お忙しい中ありがとうございました。さらなるご活躍を期待しております。
インタビュー実施日:2021年2月21日
インタビュアー及び記事編集者:橋本 幸子
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