大学院の歩み

大規模事務所で働くということ

後藤 朋子 さん

第6期修了生
西村あさひ法律事務所・弁護士


同志社大学中退(法科大学院入学)、2011年神戸大学法科大学院未修者コース修了。 司法修習生(65期・神戸)、大阪の法律事務所での勤務を経て、現職。

神戸大学法科大学院を卒業後、現職に至るまでを教えてください。

2011年に司法試験合格後、神戸で修習し、2012年12月に大阪の法律事務所に入所しました。修習時代は、裁判官に任官することも考えており、とても悩んだのですが、最終的には弁護士になることを選択しました。弁護士になってから2年間は、訴訟や示談といった一般民事事件のほか、倒産事件や渉外事件等幅広く様々な案件を扱っていました。

そして、2015年1月に現在所属している西村あさひ法律事務所に移籍しました。事務所は東京にメインオフィスがあるのですが、私は家族の関係もあり、大阪オフィスで執務しています。

現在、どのようなお仕事をされているか教えて下さい。

大阪オフィス受付
大阪オフィス受付

現在は、業務の半分以上をいわゆるM&A案件が占めており、国内や海外の様々な案件に対応しています。

M&Aにも色々な種類・プロセスがあるのですが、いわゆるDD(デュー・デリジェンス)業務が重要です。クライアントがある会社の株式を取得して子会社にすることを検討している場面を想像していただけたらと思いますが、買収先の会社について、例えば、多額の損害賠償責任を負う可能性がある紛争を抱えていないか、従業員に対して残業代はきちんと支払われているのか、買収することにより取引先との関係が悪化することはないか、買収後も変わらず事業を行っていけるのか等様々な事項を調査しなければ、クライアントは安心して会社(株式)を買うことができません。

この調査のことをDDといい、調査の結果何か問題が出てきた場合には、株式の代金額に反映させる等の対応をすることになります。DD業務においては、ビジネスの流れや契約関係はもちろんのこと、組織、人事・労務、資産等様々なことを調査する必要があるため、小規模な案件でも3~5人程度、大規模な案件であれば10人を超えるチームで対応することもあります。

他にも、先ほどの例だと、株式の売買契約書も作成しますし、実際に買収先の会社の事業を円滑に回していくための様々な法的サポートを行います。

私の仕事の残り半分は、顧問先の日常的な法律相談に乗ったり、顧問先が抱えている訴訟や紛争案件に対応したりしています。他にもパートナーの先生の執筆活動のお手伝いをすることもあります。

現在のお仕事にどのような魅力を感じているか教えて下さい。

自分が関わった案件が新聞に載ることもありますし、日々の仕事の結果、社会が動いていることが実感できるダイナミックさは大規模事務所で働く魅力だと思います。また、自分の仕事によってクライアントが喜んでくれたり満足してくれたりするのは何よりも嬉しいことですので、直接それを感じることができるという点も弁護士という仕事の大きな魅力だと思います。

反対に、現在のお仕事で苦労されていることを教えて下さい。

大阪オフィス会議室
大阪オフィス会議室

私の所属する事務所は非常に専門的な内容を扱うことが多く、中途入所だと修習同期との経験値や知識量の差がすぐには埋まらないので、その点は非常に苦労しています。また、事務所によって仕事のスタイルが違っていますので、事務所を移籍したことによって、以前所属していた事務所とのスタイルの差に戸惑ったこともありました。

また、弁護士という仕事一般で言えば、年齢の若い女性はすぐにはクライアントから信頼してもらえない場合もあり、苦労することもあるのですが、小さなことも丁寧に誠実に対応して少しずつ信頼を勝ち取っていくほかないので、自分なりに頑張るしかないと思っています。

どのような環境で仕事をされていますか。

デスク周りの書籍
デスク周りの様子

事務所は設備も整っていますし快適な執務環境なのですが、私自身はあまり長時間事務所で仕事をするのが好きではないので、夜や週末は自宅で仕事をしていることが多いです(法科大学院在学時も自習室ではなく自宅で勉強するタイプでした。)。事務所からはパソコンや携帯が貸し出されていますので、自宅でも事務所にいるのと大きく変わらない環境で仕事ができています。

また、私自身はまだ子どもはいないのですが、事務所には産休・育休や時短制度が充実しています。出産や子育て、病気等で一時的に仕事ができない状況になる人がいても、補うことができるだけの規模がある事務所ですので、弁護士にも所員(秘書やパラリーガル)にも、子育てをしながら仕事を続けている女性が多くいます。

将来は、どのような方面に仕事を進めていきたいと考えていますか。

西村あさひ法律事務所
東京オフィス外観

特定の分野に特化した専門家になるというよりは、専門性は磨きつつも、クライアントのあらゆる相談や要望に応えることができるようになりたいと考えています。

なお、私自身は、個人で事務所を開いて仕事をするというよりは、組織の一員としてチームで仕事をする方が向いている(自分の強みも発揮できる)と思っているので、独立開業することはあまり考えていません。

プライベートはどのように過ごしていますか。

平日の夜は、できる限り自宅で晩御飯を作って主人と一緒に食べることで、夫婦の時間を確保するようにしています。

週末には、法曹関係者のテニスサークルに参加したりゴルフ(下手ですが)をしたりして身体を動かしています。また、中学生のころから趣味で茶道を習っていて、週末にはお稽古に行くこともあります。茶道には心地よい緊張感と癒しがあり、仕事とはまた違う頭の使い方をするので、とても良いリフレッシュになっています。

法科大学院への進学を検討中の方々へのメッセージをお願いします。


東京オフィス受付

最近、弁護士の不祥事が報じられる等、世間には弁護士についてのネガティブな情報が多いと思いますが、大半の弁護士は多種多様な分野で誠実に仕事をしていますので、一部のネガティブな情報だけが知られていくのはとても残念なことだと思っています。弁護士という仕事は、もちろん辛いこともあるのですが、会社勤めをしているだけでは見られない世界をたくさん見ることができますし、とてもおもしろくてやりがいのある仕事です。法律の知識は当然必要なのですが、それだけではなく、社会性やコミュニケーション能力も含めた自分自身の全人格が問われる仕事だと日々感じています。

また、社会生活を送っていく中で法律の知識や素養は必ず必要になるので、弁護士の資格を持ちながら一般的に想像される弁護士とは違う世界・働き方で活躍している人も増えてきており、自分の努力や工夫次第で将来の選択肢も無限に広がると思います。

私自身も弁護士としてもっともっと成長して、このインタビューを読んでくださった皆さんといつかお仕事等でご一緒できることを楽しみにしています。

インタビュー実施日:2016年3月18日
西村あさひ法律事務所大阪オフィス
インタビュアー及び記事編集者:瀧野達郎
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