研究科の歩み

松田 貴文 さん

    2014年3月
    博士課程後期課程修了
    名古屋大学大学院法学研究科准教授

    私は2008年に神戸大学大学院博士後期課程に進学しました。研究の道に入ったきっかけは神戸大学の学部時代に履修したゼミです。法律が社会問題を規律するという実践的な側面と、なぜ人々に強制力を及ぼすことができるのかという理論的な側面の双方を持っていること、特に契約法では自由とその制約という二つの逆方向の要請が正面から問題として扱われ、さまざまなアイデアに基づくダイナミックな議論が繰り広げられていることに興味を持ちました。今となっては思い出すのも恥ずかしいくらいですが、民法で新しく展開されていた基礎理論に基づいて、刑法のゼミでも我流の解釈論を展開していたように記憶しています。このまま民法について考え続けたいと思っていたので、神戸大学大学院への進学を希望していました。
    法学研究科では、まずは外国語を学習し、そのあとは経済学を勉強し始めました。経済学の知見を用いて法律を見てみると、これまで学習してきたものが全く違う姿に見えて、まさに目から鱗が何度も落ちる驚きと刺激に満ちた日々でした。神戸大学は法学部と経済学部の垣根が低く、研究レベルで密接な交流が行われているので、これからそうした方向で研究をしてみたいという方には非常によい環境だと思います。実際に、研究の合間に経済学部の講義を受けに行ったり、先生に質問に行ったりしていました。
    いま振り返ると、大学院の時代は時間に恵まれている期間です。そのような時期には、じっくりと時間をかけて、ひとつの問題について突き詰めて考える環境が必要だと思います。神戸大学はその意味でもとても良い環境でした。頭をリフレッシュさせたいときには、少し外に出れば静かな自然があり、歴史ある建物の雰囲気も心を落ち着かせてくれます。山に登ったご褒美として、見晴らしのよい景色もあります。
     博士課程では論文を書きます。それは当然自分自身の考えを示すものですが、ひとりでは考えをなかなか進めることができません。これまでどのように考えられてきたのか、考えを進めるためにはどのような作法があるのかなど、神戸大学の先生方は、後進の育成という使命感と、おそらくご自身の関心という原動力をもって、熱心かつ丁寧にご指導くださいます。
     私自身は、現在大学教員として研究、教育に従事しています。研究に関しては、神戸大学の大学院で学んだことが自分の基礎となっていることを本当に実感します。大学院のときに何をどのように学んだかが、研究者としての私をまさに形作っているように思います。また教育に関しても、提供する側に回ってみて、いかに自分が受けていた教育が高レベルで充実したものであったかを改めて実感しています。

    (2019年11月掲載)

     

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