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法律編集者懇話会 作成
「法律文献等の出典の表示方法」より
  本ページは、法律編集者懇話会から許諾を受けて、
  神戸大学大学院法学研究科がデジタル入力したものです。

はじめに

 私ども法律関係の雑誌、書籍の出版に携わる編集者で組織する懇話会では、かねてより「法律文献等の出典の表示方法」について、その形式の統一化が図れないものかと、検討してまいりました。私どもがこのようなテーマを検討した動機は、次の理由からです。
 近年のように複雑多様な経済社会になりますと、法律専門家の方々でも、直面する問題の解決のため情報の検索に苦心されると存じます。膨大な情報量のなかで関係文献を日常的に見通していくことは、不可能に近くなってきています。そこで、多くは手近かにある文献を手がかりとして,そのなかに引用されている原典の文献を探し求めるのが通例と存じます。ところが、その引用文献の掲出スタイルは、現在のところ、著者によっても出版社によってもまちまちであり、その追跡も十分にできにくい場合が数多く見受けられます。読者から出版社への問い合わせも、この点に集中している感があります。
 ご存じのように、アメリカでは『A Uniform System of Citation』が編集発行されており、また、日本医学会でも日本医書出版協会と協力して『医学文献の探しかた』が刊行され、文献の出典表示の統一化がすすめられています。読者に、より適切な情報を提供することは、法律関係の出版社にとっても、また、著作者イコール専門分野の読者でもある先生方にとっても、きわめて重要なことと思われます。加えて、その出所を明示することは、著作権法を守り、育てていくうえでも大切なことです。そこで、「法律文献等の出典の表示方法」について何らかの共通基準がもてれば、読者の便宜これに優るものはないと考えました。その第一歩として、出版社同士がまず共通化していくことが必要と考えた次第です。
 なお、私どものこのような趣旨ならびに文献の出典の表示方法等については、1989 年に素案を発表し、法律学関係の各学会等で配布し、数多くのご意見を頂戴しました。それらのご意見を参考に、1993 年には第二次の、また 1997 年に第三次の改訂案をまとめることができましたことを、厚くお礼申し上げます。1998 年からは、この第三次改訂に補訂を加えながら年度版としますが、この案につきましても、まだ不十分なところも多いと思われますので、改めてご意見がございましたら、下記参加出版社の編集者宛にご連絡・ご教示下さいますようお願い申し上げます。

     2003 年 9 月

法律編集者懇話会   

法律編集者懇話会加盟出版社 (五十音順)
岩波書店
学陽書房
ぎょうせい
金融財政事情研究会
経済法令研究会
勁草書房
弘文堂
三省堂
商事法務
成文堂
青林書院
第一法規
東京大学出版会
東京布井出版
日本加除出版
日本評論社
判例時報社
判例タイムズ社
法学書院
法曹会
法律文化社
民事法情報センター
有信堂高文社
有斐閣



  1.  著作物の「引用」とは

     学術研究の世界では、先人の業績の上に新たなケルンを立てていくという関係は古今東西変わっておりません。自然科学の分野では事柄の客観性、再現性を重視しており、いつの時点で発表したかという発表の時点によってその論証の評価が定まることがあり、他人の業績を引用することは大変重要な要素とされています。
     それでは社会科学ではどうでしょうか。内外を問わず学問の歴史的所産の蓄積を基礎として、その創見がはじめて自立しているといえましょう。したがって、テキストや一般普及書は別として、論文や薯書の執筆に当たって他人の業績を引用することは必然であるといえるでしょう。
     ところが、「引用」のスタイルは筆者によって実にまちまちであります。それが、ときには著作権侵害かどうかの境界線をめぐってトラブルの因となることもあります。
     そこで執筆に当たっては、適法な「引用」とは何かを常に意識しておかなければならないわけです。では引用が許されるための条件とは何か、を文化庁側の見解に従って、以下に記述しましょう。
     著作権法では、その 32 条 1 項で、次のように定めています。

    公表された著作物 は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の 引用の目的上正当な範囲内 で行なわれるものでなければならない。」

    1.  引用として利用することができる著作物は、すでに公表されたものであること。
    2.  その引用が公正な慣行に合致すること。
       健全な社会通念で判断することですが、具体的には、自分の学説を展開し補強するために、他人の学説を引っぱってきたり、他人の学説や考え方を論評するために、他人の文章を引っぱってくる場合があります。しかし、引用に名を借りて、自己の著作物中に登場する必然性のない他人の著作物 (文章、図表) を借用することは許されません。
    3.  引用の方法は、言語の著作物であれば、引用文をカギカッコでくくって表示するなど、自己の文章との区分を図ること。(明瞭区別性)
       引用対象の著作物が引用されているのかどうか判然としない利用方法は、公正な慣行に合致するとはいえません。
    4.  引用の目的上、正当な範囲内で行われること。
       自分の作った著作物があくまで主体であって、引用されてくる他人の著作物は従たる存在でなくてはなりません。(主従の関係)
       引用される著作物の分量はどの程度が適当でしょうか。何字以内とか、何行とか、何ページとかいう規定があるわけでなく、どのような著作物をどのように引用するかによって具体的に違うといえましよう。事柄の性質上、俳句や短歌のような短い文芸作品の場合は、一部分の引用は考えられず、全部の引用が可能といえましょう (なお、詩歌の場合、著作権者が日本音楽著作権協会〔JASRAC〕にその著作権の管理を委託しているもので、部分引用を越えたとみなされるときは、協会所定の使用料を支払うこととなります) 。しかし、学説や論文等の場合は、その全部を引く必要はなく、引用するために必要な最小限度の範囲内に限られるといえます。
    5.  著作権法 32 条の規定によって引用が認められる場合には、著作物を翻訳して引用することができる (43 条 2 号) 。
       ただし、翻案して引用することは認められていないので (同条 1 号) 、ダイジェスト引用はできず、著作権が及ばない程度の要旨引用にとどまるといえましょう。
    6.  出所 (出典) を明示すること。 (後述 II 参照)
    7.  著作者は、著作物またはその題号に不本意な改変が加えられることのない権利を有すること (著作者人格権としての同一性保持権、20 条) 。
       著作物の利用に当たっては、著作物をそのままの形で利用することが理想的ですが、著作物利用の目的・態様から一部分カットしたり、修正する必要のあるときは、単純ミス訂正の場合を除いて、 著者の承諾を得なければなりません。
     (以上、 1. 〜 7.の記述は、加戸守行著『全訂著作権法逐条講義』〔改訂新版、1994 年〕および文化庁著作権法令研究会編『著作権法ハンドブック』〔改訂新版、1998 年〕より一部要旨引用。ともに、著作権資料協会〔現、著作権情報センター〕発行)
     なお、上記 1. 〜 7.のほか、さらに付言すれば、引用される著作者の名誉や声望を害する方法でその著作物を利用することは、著作者人格権を侵害する行為とみなされています (113 条 3 項) 。たとえば、著作者の旧説を引用してことさら論評することなどはこの例といえましょう。

     
  2.  出所 (出典) の明示

     著作権法 48 条では、「出所の明示」を定めています。つまり、引用する場合には、「著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。」 (1 項) とされています。
     そして、出所の明示に当たっては、この明示によって著作者名が明らかになる場合 (たとえば、夏目漱石全集) および無名の著作物の場合を除き、「当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない」 (2 項) とされています。
     

    1.  合理的と認められる方法および程度とは、一般的に利用される著作物が出所の明示によって特定されることが必要で、少なくとも「著作物の題号」と「著作者名」の明示が必要であると一般的にいわれています。
    2.  法律の分野において、どのような出所明示の方法が適当であるか、われわれ編集経験者の総力を結集して作成したのが、以下に記述した「法律文献等の出典の表示方法」です。


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