大学院の歩み

これまでの経験を活かして

安齊 孝真 さん

第7期修了生
兵庫県企画民事部管理局 文書課法務班主任


ご経歴
1997年 大阪明星高校卒業
2001年 京都工芸繊維大学繊維学部応用生物学科卒業
2003年 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科応用生物学専攻修了
2004年 兵庫県農林水産部農政企画局農業経営担当課経営構造係勤務
2007年 兵庫県姫路県税事務所自動車税課(徴収担当)勤務
2012年3月 神戸大学大学院法学研究科実務法律専攻(未修コース)修了
2012年4月~9月 神戸大学法学部(科目等履修生)
2012年10月 兵庫県姫路県税事務所自動車税課勤務
2012年11月 兵庫県退職・司法修習開始
2013年 司法修習修了(新66期)
2014年 兵庫県企画県民部管理局文書課訟務係(現法務班)勤務

法科大学院へ進学されたのは何故ですか。


兵庫県庁

兵庫県で勤務する前は、大学及び大学院で応用生物学を専攻しており、法的知識はほとんどありませんでした。しかし、公務員として働くようになって、その職務の多くは、法律を根拠とする処分や事務であることから、法的知識の修得の必要性を感じていました。兵庫県では、地方自治法26条の5による自己啓発等休業制度を設けており、職員の公務に関する能力の向上に資すると認められる場合に、3年間休職して大学等課程の履修をすることができる制度があったため、同制度を利用して神戸大学の法科大学院に進学しました。他の自治体では、同様の制度を設けている場合も多いようですが、設けていない自治体もあるようです。

現在はどのようなお仕事をされていますか。


地表自治に関する専門的な書籍や雑誌

法科大学院を終了後、司法試験に合格したのですが、司法修習生は最高裁判所の職員であり、地方公務員である兵庫県職員としての身分を兼ねることができないため、いったん兵庫県を退職し、司法修習の修了後に再度兵庫県に採用されました(司法修習生としての兼職や再度の採用の可否は、自治体によって扱いが異なるようですが、給費制が廃止されたため、最高裁判所は兼職を認めているようです)。再度の採用後、現在の職場である文書課法務班に配属されました。業務の9割程度は、訟務対応及び法律相談で、条例や規則等の例規審査の業務は1割程度です。

訟務対応については、準備書面等の作成、証拠等の収集、内部の応訴決裁や出訴決裁の草案作成、顧問弁護士との調整等を行っています。兵庫県を当事者とする訴訟の多くは被告事件であるため、被告代理人としての対応が大半です。

法律相談については、一般的な法律相談から契約書のチェック等、全庁から年間200件程度の相談を受けています。

例規審査については、議案やあらため文の作成等を行っています。

現在のお仕事にどのような魅力を感じていますか。


書棚には行政訴訟に関する書籍を
主として様々な法律の書籍が並ぶ

法律相談について、判例等を踏まえた法的な助言を行うにとどまらず、今後の影響等も見据えた、踏み込んだ助言ができることに魅力を感じています。例えば、消滅時効の主張が認められそうな案件であっても、公益を担う行政機関である以上、そのような主張は差し控えるべきではないか、という場面もあります。

また、組織内部の法律相談であり、紛争のごく初期の段階から相談を受けることができるため、今後の訴訟を見据え、資料等の保存方法について助言をすることや、過失の有無自体が争点となりうる事案については、行政側に過失があることを前提とした折衝を行わないよう助言をすることもあります。その他、相談者の決裁における決裁権者の説得の方法等、相談者が実務的に直面している問題に対して相談を受けたり助言をしたりすることは、組織内部の法曹ならではの経験だと思います。

訴訟対応については、処分や裁決の取消訴訟等、特殊な類型の行政訴訟を経験できることや、行政機関が保有する膨大な文書の中から、実際に書証として提出する文書を選別する作業は、組織内部の法曹でなければできない経験であるので、この点にも魅力を感じています。

お仕事をするにあたって心がけていることはありますか。


文書課には庁内の法律に関する様々な相談が集まる

先にも述べたとおり、法律相談において、相談者が実務的に直面している問題に対しても助言し、相談者が相談をして良かったと思えるような対応ができるように心がけています。特に、クレーマー対応についての相談は、相談者自身が疲弊している場合も多いため、違法なクレームに対しては毅然とした対応をしても構わないことを伝え、相談者に安心してもらうことが目的になっている面もあります。

その他にも、以前は相談する側から堅苦しいと思われがちな部署だったようですが、こちらから相談者の課室に出向いて相談を受ける等、できるだけ気軽に相談できるような雰囲気を作るよう心がけています (インタビューの席には、元同僚の方にも同席頂きましたが、安齊さんが文書課に来てからは法務班の雰囲気が変わったと仰っていました)。

将来、どのような方向に仕事を進めていきたいですか。


行政関係判例解説集

今後は、公務員に拘らず、在野の弁護士として活動することも視野に入れて、現在の仕事で培ってきた経験を活かした仕事をしていきたいと考えています。特に、行政事件を取り扱う弁護士であれば、現在の職場での経験を活かした、行政機関や公務員が抱える特有の問題や悩み事に共感し、それを解決・解消するような法的サービスを提供できるのではないかと思います。

法科大学院で学んだという経験は現在の仕事にどのように役立っていますか。


インタビューの様子

基本的な法的な思考方法はもちろんのことですが、現在の仕事では行政事件を扱う事が多いため、行政法の授業で学んだことが役立っています。特殊な訴訟類型や法律相談に対応する場合、中川先生の分厚いレジュメ(所謂、電話帳)を今でも大切に使わせて頂いています。

また、兵庫県の各種委員等に神戸大学の先生が就任頂いているので、訴訟や相談などで現在も神戸大学の先生方にお世話になっています。

最後に、神戸大学法科大学院で勉強している後輩やこれから法科大学院に入学しようと考えている方へ一言お願いします。


デスクからは神戸の街が一望できる

神戸大学の法科大学院に限ったことではありませんが、法科大学院に進学するということは司法試験に合格することが最大の目標となるので、とにかく「何が何でも司法試験に合格するんだ!」という気持ちを持って勉学に励んで欲しいです。そのためには、有効だと考えられるあらゆる手段を用いて勉強することが必要ですが、できるだけ孤立せず、仲間と情報交換や答案の相互添削を行うことが大切だと思います。

これから法科大学院へ進学することを考えている方も、司法試験合格という目標を強く自覚して、これからの進路を決めて欲しいと思います。また、特に社会人の方にとっては、法科大学院へ進学すること自体が勤務先や家族に対して大きな影響を与えるので、事前に十分な相談をすることが必要だと思います。

法曹という仕事は、それなりに苦労や大変さがありますが、様々な人と関わる中で、自分自身が成長することができる仕事ですので、頑張って挑戦して下さい。

お忙しい中ありがとうございました。さらなるご活躍を期待しております。
インタビュー実施日:2016年6月17日
インタビュアー及び記事編集者:西原健史
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