大学院の歩み

弁護士業務と英語 ~留学(チャンス)を活かして~

下西 正孝 さん

第2期修了生
北浜法律事務所・弁護士


ご経歴
1980年10月 大阪生まれ
1999年3月 洛南高等学校卒業
2004年3月 京都大学法学部卒業
2007年3月 神戸大学法科大学院修了
2007年9月 司法試験合格
2008年12月 司法修習修了(新第61期)、弁護士登録(大阪弁護士会)、北浜法律事務所・外国法 共同事業入所
2011年12月 外資系民間企業(製薬)法務部に勤務
2014年5月 カルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)ロースクール卒業 法学修士(LL.M)
2014年8月より 海外研修開始
2014年8月~11月 米国製薬会社本社勤務(リーガル・インターン)
2014年10月 ニューヨーク州司法試験合格(2015年5月 ニューヨーク州弁護士登録)
2014年11月~15年8月 海外勤務(米国LA、フィリピン及びマレーシアの法律事務所勤務)
2015年9月 北浜法律事務所復帰

現在なさっているお仕事の概要を教えていただけますか。

半年前に留学から帰ってきたばかりなのですが、海外との取引などが関係する渉外案件が多いです。また国内案件では、外資系民間企業の法務部にて企業内弁護士として出向勤務した経験があることもあり、日本国内の外資系企業がクライアントである案件に多く関わらせていただいています。その他にも、労務、知的財産、M&A、倒産など幅広い分野の仕事に関わらせていただいています。

企業内弁護士として勤務してみてどうでしたか。

裁判官は弁護士が整理した主張を目にしているだけだと言われたりしますが、弁護士も依頼者の企業方々が整理した事実や情報を見ていることも多いと思います。企業内弁護士の仕事は、企業の中の事象について情報を集め、これを整理していく必要がありますし、またビジネスがどのように動いているのかといったことを把握する必要があります。単に法律ではこうなっているというアドバイスではなく、アドバイスを実際にどう実行していくかも重要になります。出向後事務所に戻ってからも、そのような観点から、依頼を受けた企業の方々に対して、より具体的かつ実践的なアドバイスをするという意識を持つことができ、企業内弁護士として仕事をした経験がとても活かされていると思います。

お仕事の面白い点や苦労する点などはありますか?

私は弁護士の仕事としての一番の醍醐味は、自分で考えて仕事をする点だと思います。毎回全く同じ内容の仕事はありませんし、毎日様々な分野の仕事をしていくことが求められます。常に新鮮な気持ちで仕事に取り組むことができる反面、手さぐりなことも多く、その分苦労もあります。また勤務時間も比較的長くなりがちですし、人の紛争に飛び込んでいく職業である以上、ストレスを感じることもあります。自分でこれらのストレスをうまくマネジメントし、ケアしていくことが仕事を続けてくために重要だと思います。苦労する点も多いですが、自分の仕事の結果に対して、依頼者から直接感謝されることはうれしいですし、やりがいを感じますね。また、私は渉外案件や外資系企業の方々などとお仕事させていただくことも多いため、いろいろな国の方々と英語を使って交流をする機会が多いことも楽しいですね。

留学やその後の海外研修を経験されているとのことですが、英語は元々勉強されていたのでしょうか。

学生時代に海外留学した経験はありませんでしたが、もともと英語を勉強するのは好きだったので、法科大学院を修了してからや、事務所に入ってからも英会話スクールに通ったりして英語の勉強を続けていました。事務所に入ったころは国内案件しか担当しておりませんでしたが、徐々に英語を使う案件が増えてきました。英会話スクールなどで勉強するよりも、実際に仕事で使いながら学んでいく方がよく身についたように思います。でも留学前は、米国のロースクールへの留学に必要なTOEFLのスコアを出すのにとても苦労しました。

留学についてお話を聞かせていただけますか。

先ほど述べたようにもともと英語は好きだったので機会があれば留学に行きたいと思っていました。私が入所した北浜法律事務所は、企業や官庁への出向や海外留学にも積極的で、入所5年目の2013年から2年間、留学と海外研修に行かせていただくことができました。留学・海外研修で日本の外に出て、異なる環境・文化に触れることができたのはとてもよい経験になりました。私は、米国ロサンゼルスのUCLAに留学したのですが、留学中は、ロースクールでの勉強や、卒業後のNY州の司法試験受験のための勉強はとても大変でした。しかし、法律を勉強する以外にも、いろいろな人と交流して新しいネットワークを作ることができて、とても楽しく有意義な時間を過ごせたと思います。2年間の留学・研修期間はあっという間でした。もっともっと英語を上達させたかったという気持ちがあるのが本音です。

現在のお仕事でもよく英語を使われますか。

現在、私の仕事は、半分以上が英語を使う仕事です。契約書や海外の裁判手続きの書類などを読んだり、メールや書類を作成したり、電話会議やテレビ会議で色々な国の依頼者や現地弁護士と打ち合わせをしたりして毎日英語を使っています。英語が使えることは、弁護士という業務にとって必須というわけではありませんが、英語ができる人にしかできない弁護士の仕事というものが確実に存在します。そういう意味で、英語を身に付けておいた方が仕事の幅は広がると思います。ただ、我々はあくまで法律家であり、英語は自分が考えていることを伝えるツールの一つにすぎません。弁護士にとっては、ベースとなる法律の知識や考え方というものが一番大事だということを忘れてはいけないと思います。

法科大学院で学んだこととお仕事とのつながり・利点はありますか。

私は、法科大学院生の時、司法試験の選択科目として最初に労働法を勉強し、その後結局知的財産法に鞍替えして、司法試験は知的財産法を選択科目として受験しました。この二つの法分野は、どちらも今の仕事で主に取り扱っている分野であり、その意味で、法科大学院で学んだことが、そのまま今の仕事につながっています。 また、私は、R&W弁護士実務というゼミを受講していたのですが、実務家教員である弁護士の先生から、法律の規定や解釈ももちろん大事であるが、実務の世界では、事案の背後にある事実関係を把握することも大事であり、事実関係を丁寧に見るよう繰り返し指導していただきました。この教えは、実務に出てからも非常に役立っていると思います。 さらに、法科大学院を通じて得ることができた友人・教授等とのつながりは、非常に貴重な財産だと思っています。弁護士の業界に限らないことですが、社会に出て仕事をしていく上では、人とのつながりがとても大切だと思います。法科大学院生は、司法試験合格という目標に向けて頑張る必要があるのはもちろんなのですが、その目標に向けて進む中で、できるだけ周りのいろいろな人とのかかわりを大切にしておくべきだと思います。法科大学院で得られたこうした財産は、将来的に仕事面でもプライベートでも、とても活きてくると思います。このような貴重な財産を得ることができた神戸大学法科大学院に今では非常に感謝しています。

最後に、これから法科大学院へ入学しようとする後輩へ一言お願いいたします。

弁護士の仕事は色々大変ではありますが、非常にやりがいもあります。実務に出てからも、現状に満足せず常に自分を磨き続けることが重要になってきます。また、先ほど述べた企業への出向でも、海外留学でもそうですが、自分にとって初めてのことに対しても積極的に思い切って飛び込んでいくことがとても大切だと思います。思い切って飛び込むことでいろんなチャンスがつかめるんじゃないかと思っています。これから法科大学院に入学される方には、司法試験などいろいろ不安なことも多いと思いますが、法科大学院に入学して学ぶことで、今後いろいろなチャンスをつかむことができるようになると思いますので、積極的にいろいろなことにチャレンジしていただきたいと思います。また、司法試験合格は一つの大きな目標ではありますが、司法試験の合格はあくまで法律実務家になるためのスタートラインだと思いますので、その先を見据えて、いろいろな面で自分を磨き続けることも大事になってくると思います。法科大学院での周りにいる自分と同じ目標を持った優秀な仲間とのつながりを大事にして、一瞬一瞬の時間を大切にし、将来に向けて頑張ってほしいと思います。

お忙しい中ありがとうございました。さらなるご活躍を期待しております。
インタビュー実施日:2016年3月29日
インタビュアー及び記事編集者:藤本元気
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