任期付公務員という選択肢~大阪の法律事務所から公正取引委員会へ~

村上 亮 さん

第1期修了生
公正取引委員会事務総局審査局・弁護士

ご経歴
2004年3月  京都大学法学部卒業
2006年3月  神戸大学大学院法学研究科実務法律専攻修了(法務博士)
2007年9月  新司法試験合格
2008年12月  最高裁判所司法研修所修了(新61期),弁護士登録(大阪弁護士会)、藪野・藤田法律事務所に入所
2013年4月  同事務所退所,公正取引委員会事務総局に任期付職員として採用
現在 公正取引員会事務総局審査局訟務官付審査専門官(主査)

大阪での法律事務所ではどのようなお仕事をされていましたか。

大阪の法律事務所では、訴訟業務のほか、企業からの相談対応といった業務をしていました。また、多様な分野の経験を積むために、弁護士会の委員会等を通じて、事務所で扱わないような案件を受任するようにしていました。当時の上司にもたくさんご指導いただきましたし、大阪での4年3か月間で弁護士としての基礎を築くことができました。

他方で、独禁法に関する事件を経験する機会はありませんでした。ただ、学生時代から独禁法を勉強していましたし、公取委の任期付職員として働くことにも興味があったので、弁護士会や公取委の近畿事務所の独禁法関連の研究会に出席して、継続して勉強の機会を持つようにしていました。

現在、公取委ではどのようなお仕事をされていますか。

審査局の訟務官付に配属されていて、審判事件や行政訴訟事件に関する業務を担当しています。

具体的には、公取委が行った独禁法違反事件(カルテル、入札談合、優越的地位の濫用等)の排除措置命令や課徴金納付命令につき、審判請求や取消訴訟が提起された場合に、各命令の適法性を主張立証すべく準備書面を起案したり、期日対応を行ったりしています。刑事事件の公判検事の業務をイメージするとよいかもしれませんね。

また、審査中(行政調査中)の独禁法違反被疑事件についても、行政訴訟で問題となりそうな点などを検討したり、事業者への立入検査に同行することもあります。こちらは、刑事事件の捜査検事や警察官の業務をイメージするとよいかもしれません。

なお、公取委は他の省庁に比べると職員数は多くないのですが、私のように弁護士から任期付職員となった方が10数名いるほか、裁判所や検察庁から出向されている方もいるなど、比較的多くの法曹有資格者が活躍されています。

公取委でのお仕事のご苦労ややりがいを教えてください。

事件の規模が大きく、仕事内容も難しいため、苦労することは多いです。

どの事件の事件記録(主張書面や証拠等)も、事実関係が複雑で関係者も多数に及ぶことなどから、膨大な量になります。また、教科書には書かれていないような未知の論点が争点となることも多いです。そのような中で、事件記録と長時間格闘して、事実と主張を整理して主張書面を起案し、局内での調整を行った上で提出するという一連の業務は、毎回、本当に大変です。

もっとも、苦労が多いからこそ、非常にやりがいのある仕事です。

例えば、審決に担当事件の争点に関する審査官の主張がほぼそのまま採用された時は、とても嬉しく感じました。また、事業者側の代理人には経験豊富で著名な弁護士の方々が就かれていますから、そういった先生方と対峙できることは、とても貴重な経験です。さらに、難しい事件に真剣に取り組むからこそ、自分の法曹としての成長を実感する機会もたくさんます。そのような時は、素直に「公取委で働くことができて良かった」と思います。

公取委の中での法曹資格者の役割や、他の職員との関係はどのようなものですか。

国家公務員試験により採用された一般の職員(プロパー職員)は、様々な部署で様々な業務を経験しながら、独禁法等の執行や競争政策に関与します。

他方で、法曹資格者は、任期付職員(現在10数名)のみならず、任期付職員からプロパー職員になった方、裁判所や検察庁からの出向者がいます。法曹資格者は、法律実務を扱う特定の部署に配属されます。具体的には、私が所属する訟務官付、企業結合課、審決訟務室などです。法曹資格者は、法律実務の専門的知識を有する者として、的確な意見を述べ、プロパー職員の業務を助けることが求められています。

もし、皆さんが公取委で働くことに興味をお持ちならば、幅広い業務を経験したいのか、法律実務の専門的知識を活かして働きたいのかを検討した上で、国家公務員試験と任期付職員採用のどちらに応募するかを決めると良いかもしれませんね。

将来どのような方面に仕事を進めていきたいですか。

これまで公取委で勤務した経験を活かせるよう、独禁法に関わる仕事を今後も続けていきたいと考えています。

神戸大学法科大学院で学んだことは生かされていますか。

神戸大学法科大学院では、例えば、裁判例を読む際には、現在の裁判例の到達点とそこに至るまでの過程や経緯も合わせて理解するようにとの指導を受けました。また、法律要件に事実をあてはめる際には、自分の立場にとって都合の良い事実だけを挙げるのではなく、都合の悪い事実をどのように評価するかをきちんと示すことが、説得力のある文章を書く上で大切であるとの指導を受けました。

特に難しい事件を担当することになった際には、こういった基礎的なことが突破口になることがよくあります。法律実務家になった今でも、神戸大学法科大学院で学んだことのありがたみを感じることは多いです。

法科大学院生ないし入学を考えている後輩へのメッセージをお願いします。

神戸大学法科大学院の良いところは、学生と先生方との距離が近いことだと思います。先生方は、在学中も私の質問や相談に親身に応じて下さいましたし、ありがたいことに、卒業から随分経った今でも私のことを覚え下さっています。そして、神戸大学法科大学院の先生方は、各学会の第一線にいらっしゃる方ばかりです。そのような先生方に指導していただいたことは、大変貴重な経験でした。

また、修了後の進路にも、多様な選択肢があると思います。例えば、私の勤務する公取委も、皆さんにとって魅力的な職場の一つだと思います。公取委では、様々なバックグラウンドを持つ強い使命感をもった同僚から刺激を受けつつ、責任のある仕事をすることができます。

ぜひ、皆さんも、将来、神戸大学法科大学院で学んだことを活かして活躍できるよう、日々の勉強に励んでください。


お忙しい中ありがとうございました。さらなるご活躍を期待しております。

インタビュー実施日:2016年9月15日
インタビュアー及び記事編集者:長田 知樹

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