企業法務弁護士が語る!弁護士という仕事と法科大学院

名倉 大貴 さん

第2期修了生
弁護士法人東町法律事務所・弁護士

ご経歴
1981年 兵庫県出身
2004年 東京大学法学部卒業
2007年 神戸大学法科大学院修了、司法試験合格
2008年 司法修習修了(新61期)、弁護士登録、東町法律事務所入所

公務・役職等
2009年 兵庫県立大学大学院会計研究科 非常勤講師(金融商品取引法) ※
2011年 関西学院大学法学部非常勤講師
2012年 尼崎市提案型事業委託制度設計会議委員 ※
2013年 神戸大学法科大学院リーガルフェロー ※
2014年 第三者委員会補助者(東証一部上場企業) ※
(※は退任・退職済)

先生は普段どのようなお仕事をされていますか。

東町法律事務所受付にて。名倉先生と事務所ロゴマーク。

私が所属している弁護士法人東町法律事務所は、企業法務を中心に様々な業務を取り扱う事務所です。私自身も、入所当時から企業からのご相談、金融関係、自治体関係の案件を数多く取り扱ってきました。

企業法務関係の仕事として一つ特徴的だったのは、私が事務所に入ってから1~2年経った頃に、顧問先の企業に出向したことです。1年目は週4回程度、2年目からは週1~2回程度の頻度でしたが、ある食品会社の法務部に所属して、社内のコンプライアンス体制の構築支援を中心に、日常的な法務や債権回収の相談対応まで、幅広く仕事をしていました。コンプライアンス体制の構築支援としては、例えば、部署ごとにリスクマップ、すなわち、○○という事業には××という法的なリスクがあって、そのリスクにどのように対応していくか、という一覧表を作成し、それを実際に運用していく業務のサポートをしていました。

現在は、割く時間の割合で言うと、いわゆる企業法務が5割程度、中でも労務系の案件がその5~6割程度だと思います。労働法は司法試験受験時の選択科目ということもあり、入所当初からやりたいと言っていた分野でもあります。また、法科大学院生時代は具体的なイメージがつかめなかったために会社法があまり好きではありませんでしたが、なぜか最近会社法を使う仕事が多くなってきています。

次に多いのが、全体の2.5~3割くらいを占める行政関係の案件です。基本的には顧問先の自治体から相談を受けたり、訴訟の代理人として活動する、という形が多いです。

残りの2割くらいは倒産処理案件です。個人で受ける破産管財事件や、事務所が受ける大規模な破産管財事件を事務所のメンバーとともに担当する、といった業務が中心です。

その他、金融機関・企業の債権回収や、個人として相続・離婚・刑事事件も受任することがあります。市役所の無料相談や法テラス、弁護士会主催の相談会にも参加しています。

仕事にかける時間を「訴訟」と「訴訟以外」で区別すると、訴訟専門の弁護士に比べれば、訴訟案件は少ないほうだと思います。訴訟は全体の4割程度、訴訟以外が6割程度です。訴訟以外の場面での仕事としては、一般的な法律相談に加え、契約書や社内規程の作成・チェック、株主総会のサポート、会社非訟、M&Aのサポートなどの業務があります。

弁護士を目指されたきっかけを教えてください。

会議室。写真中左側にあるモニターを通じ、今治事務所・東京事務所とテレビ会議をすることもある。

どうしてそんなことを書いたのかはよく覚えていませんが、実は、小学校の卒業文集で既に「弁護士になりたい」と書いていました。中高生時代は弁護士になること自体はあまり意識していませんでしたが、具体的に法曹になることを意識し始めたのは大学2年生の頃です。進路の選択肢としては、企業への就職・公務員・法曹がありましたが、「専門的なスキルを身につけたい」、「個別の紛争を解決していくことによって実感を持てるような形で世の中を良くしたい」という思いがありましたので、専門性が高く、また、身近な紛争の解決のサポートができる「法曹」、とりわけ弁護士になりたいと意識するようになりました。

そして、大学卒業後、神戸大学法科大学院へ進学しました。

それ以降は、法科大学院在学中も、司法試験合格後の司法修習中も、弁護士になりたいという思いは揺らぎませんでした。裁判官や検察官になるという道も考えなかったわけではありませんが、弁護士の方が、法廷に行くだけでなく、個人から企業まで様々な顧客と接することができ、幅広く活動をしているのが魅力的でしたので、志望はぶれませんでした。

ただ、企業法務をメインにやりたいと最初から思い描いていたわけではなかったので、今のような仕事に携わっているのは、現在所属している事務所とのご縁だったのかなあと思います。

法科大学院時代の思い出をお聞かせください。

受付前の書棚。法律雑誌が並んでいる。写真には収められなかったが、事務所内には、膨大な資料や書籍が所狭しと並んでいた。

私は神戸大学法科大学院の2期生ですが、この代はとても仲が良かったです。今でも時々飲み会を開いたり、仕事のことを相談できる仲間がいます。共に同じ目標に向かう仲間のつながりができたのはとても良かったと思います。

普段の授業では、現在でもそうだと思いますが、ソクラティックメソッド(双方向の対話形式による授業)が展開されていました。講義範囲の予習をしてから授業に臨むのですが、予習時には想定していなかった質問が先生から投げかけられることがあり、大変でした。

また、神戸大学法科大学院には木々に囲まれた学生専用の自習棟があります。24時間365日開いているので、泊まり込みで勉強をしている人がいたのは印象的でした。

あと、神戸大学と言えばイノシシですね。私は神戸出身なのでイノシシは慣れていたつもりでしたが、法科大学院進学を機に神戸に戻ってきた際、やはり驚きました。

たまに食べるレストランさくらのご飯がおいしかったのもよく覚えています。

法科大学院に進学することのメリットは何だと思われますか。

契約書のチェックにしても訴訟にしても、「もしかしたらこういうことが起きるかもしれない」という想定が必要な仕事です。そこにはリスク判断とそれを書面や主張にどう落とし込むかという問題が常につきまといます。訴訟の場合で言えば、当事者からの話や証拠など、自分が持っている材料を使って相手方の主張に対する反論を考えていく中で、色々な可能性を検討して、それに対処していくことが求められています。法科大学院におけるソクラティックメソッドでは、授業での質問が予習段階での想定と違っていることがよくありましたが、先生からの質問を想定して予習することが様々な可能性を検討するいい練習にもなりました。よくわからない論点を同級生や先生と議論した経験は、今に活きていると思います。

また、行政訴訟等の難しい論点を含む事件を担当するときや、顧客から依頼された意見書を書くときでも、判例の射程や、判例相互の関係をじっくり考える機会は実務に出てからも多いように思います。法科大学院では、対話型演習で第一審から最高裁までの判例の事案を読むことが多々ありますが、判例をしっかり読み込むことで、思考訓練の基礎基本を学べました。

さらに、友達と自主ゼミを組んで、ああでもないこうでもない等と議論したのもよい経験でした。法律の勉強というと、どうしても自分一人の世界に籠ってしまいがちですが、法科大学院に行くことの最大のメリットは「一人で勉強するのではない」ことであると思います。弁護士の仕事は、コミュニケーションが大切です。どうしたら他人に理解してもらえるか、他人に納得してもらえる書面を起案できるか、ということを常に考えています。ひとりよがりな起案になると客観性が失われて、説得力が無くなってしまいます。法科大学院における対話型の授業や友達との議論は、まさに他人に理解してもらうための基礎的な思考訓練ですから、弁護士になってからの仕事に直結していると言えると思います。

最後に、進路選択という人生の岐路に立つ後輩達にメッセージをお願いします。

受付には、所属弁護士の名を連ねた案内板がある。かっこいい。

最近は、司法試験に合格しても修習資金が貸与制であるなど、法曹になるためのコストが高くなっているのは、残念ですが事実です。昔ほど弁護士が特別な職業というわけでもありません。しかし、弁護士は、一つとして同じ事件が存在せず、日々新しいことを経験しながら常に刺激的な仕事ができるという点で非常に魅力的な職業であると思います。訴訟になる前に紛争解決のためにできることがあるという点でも、魅力を感じています。さらに、弁護士になると一年目から自分で色々なことが決められますし、一人の専門家として活動することになります。そこにはもちろん責任が伴いますが、自分の責任でどこまでやるか、できるかをコントロールできるのも魅力です。

私は弁護士になってから今年で8年目になりますが、今のところ飽きていませんし、大変なことも多いですが、楽しい職業であるという思いは変わりません。

また、法律的な素地があることは、どのような仕事をするにせよ、確実に皆さんにとっての自信やスキルになりますし、弁護士を含む法律専門家が活躍できるフィールドは少しずつ広がっています。

進路として法曹を視野に入れている皆さんはぜひ、積極的に色々なタイプの弁護士に会ってみて、直接話を聞いてみてほしいと思います。

お忙しい中ありがとうございました。さらなるご活躍を期待しております。

インタビュー実施日・場所:2016年7月15日・弁護士法人東町法律事務所(神戸)
インタビュアー及び記事編集者:五百井健太

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