企業法務~インハウスで広がる世界~

工藤 寛太 さん

第6期修了生
大和ハウス工業株式会社 法務部統括管理室 リスク・コンプライアンスグループ・弁護士

ご経歴
1986年 大阪生まれ
2004年 滋賀県立膳所高校 卒業
2009年 同志社大学法学部法律学科 卒業
2011年 神戸大学法科大学院 修了
2012年 司法試験合格 (新66期生)
2015年1月 京都の事務所入所
2015年 大和ハウス入社

インハウスの弁護士として大和ハウス工業株式会社に勤務する工藤寛太先生にインタビューを行った。

先生は、同志社大学の法学部を卒業したのち、神戸大学法科大学院の既習コースに入学・修了され、司法試験に合格。司法修習後、京都で1年間法律事務所の勤務を経て、一昨年から大和ハウス工業株式会社のインハウス弁護士として勤務するに至る。

今回は、法律事務所とインハウス両方を経験された先生に、インハウスとしての具体的な勤務の内容及びその魅力についてインタビューさせていただいた。インハウスといっても、企業によりその内容は様々であろうが、1つの具体的イメージとして、進路選択を考える上での参考にしてもらえればと思う。

インハウスの弁護士といっても、そのお仕事内容がどのようなものかあまりイメージできないのですが、具体的にどのようなお仕事をされているのですか

工藤さんとロボットスーツ。大和ハウス工業ではロボット事業も展開しているとのことです。

法律事務所勤務の弁護士からも「そもそも何しているの?」とよく聞かれます。そんな状態ですから、イメージできないのは当然だと思います。

まず、当社の法務部の構成ですが、知財を取り扱うチーム、法的な観点から現場の支援を行うチーム、リスク管理を行うチームの3つに分かれており、私はリスク管理を行うチームに所属しています。法務部員の数は約70名で、そのうちインハウスは、本社に私1名、東京に3名の計4名です。

私のチームは、「具体的な問題が発生する前にその芽を摘む」ということを究極的な目標として業務を行っています。いわゆる予防法務というものでしょうか。私がどんな仕事をしているのかをお話すると、トラブルの芽などの問題点を発見して社内で自浄できるような体制(会社法でいう内部統制システム)を強化していくことを目指して、色々と企画・立案をしています。例えば、当社グループ全体の内部統制システムを管理・監督するための会議体を新設して運用したり、監査役の監査権限・機能を向上させるために、監査役に直接内部通報を行うことができるような仕組みを構築するといったことを行ってきました。これからは、海外拠点におけるリスク管理体制の確立や、外国公務員への贈賄防止体制の構築を進めていく予定です。

そのほかにも、現場からの法律相談への対応も行いますし、当社は第二種金融商品取引業者ですので、適正な金融商品取引となっているかの確認作業なども行っています。

インハウスというと、専門化された分野での仕事が多いと思っていたのですが、工藤さんの扱っておられる分野はむしろ広いのですね

当社はハウスメーカーなので、宅建業法、建設業法その他の不動産関係法令の解釈論が仕事の中心になります。そういう意味では専門化されているのかもしれません。しかし、当社は住宅だけでなく、物流施設や商業施設も扱っていますし、写真にあるとおり、ロボット事業も行っています。子会社まで含めると、ホームセンターや保険会社、カード会社まで様々で、当社グループの事業に関連する法令は多岐に渡っています。また、企業に対する社会の要請は法令を守ることだけではありませんから、他企業の動向や社会情勢・経済情勢にもしっかりと目を向け、法令を守ること以上の社会的要請を敏感に感じ取って対応する必要があります。

「必要があります」というと義務的なニュアンスになりますが、まったく義務付けられているという感覚はありません。少しカッコつけて言うと、「知らないこと、知りたいことが山のようにあるのに、それら全てを一朝一夕に知ることはできず、もどかしい」という感覚に近いです。当社に入社してから、興味・関心の幅が格段に広がり、見える世界も遥かに大きくなりました。

転職はどのような経緯でされたのですか

転職をしようと考えたのは、「個人プレーでなく、チームプレーをしたい」と考えたことと、「現場に近い位置で企業法務をしたい」と考えたことが主な理由です。

法律事務所に勤務していたときは、代表弁護士の指示の下、各人がそれぞれ担当の案件に取組むという個人プレーが中心でした。しかし、みんなで膝を突き合わせて意見を出し合い、チームプレーで1つのものを作り上げていく方が面白いだろうし、自分の性にあっていると思うようになり、それができそうなインハウスという道を考え始めました。

また、顧問弁護士という立場で企業法務に関わっているうちに、「会社の内情や商品等のことをよく知った上で、会社と一体になって対応していく方がよいのではないか」と生意気にも考えるようになり、「それならいっそ会社の中に入ってしまおう」とインハウスへの転職を決意しました。

実際に会社に入られて、そのような魅力を感じますか。他にも魅力を感じることがあれば教えてください

会社にいると、1人で物事を決めることはほとんどなく、チームのメンバーや他部門と打ち合わせを重ね、上司・役員の承認を得るという手続を踏んでいかなければなりません。これを手間だと考えることもできるかもしれませんが、私は、みんなで意見を交わし合い、法律だけでなく、会計・税務、企業経営の観点まで考慮した上で仕事を進めていくのは面白いと感じています。

また、「現場に近い位置で」という観点では、会社の外から第三者(顧問弁護士等)として企業法務に携わるのと、会社の中で従業員として携わるのでは大きな違いがあるように感じています。会社の中にいると、会社が進もうとしている方向性とか、会社の体質・風土が嫌でも身についてきますし、事業の現場には、理屈だけでは割り切れないことが沢山存在するのだということが非常によく分かります。これら会社の全てを考慮した上で、そこに法的観点を乗っけて、現場の方々と一緒になって、進むべき道を決めていけることがインハウス独特の面白味だと思っています。

さらに、株式、会社の機関設計、剰余金配当など、これまで抽象的な概念としてしか把握できなかったものが会社の中で生きている様子を自分の目で見ることができるのも、インハウスの面白味ではないかと思います。自分の目で見て初めて「あの判例はこういう意味だったのか!」と気付くことも多く、勉強するのが楽しくなってきます。

このように、インハウスの仕事には色々な魅力があります。さらに、私は上司・同僚・後輩など周りの人にも恵まれて、毎日楽しく仕事をしています。体の疲労さえなければ毎日仕事をしていても苦痛でないくらい、仕事が面白いです。


先生がお仕事を楽しんでされているのがとても伝わってきますが、苦労されていることはありますか

「理屈だけでは割り切れないこと」という話をしましたが、ここが苦労する、というか難しいところです。例えば、「こういうリスクがあるから、こういった対応をせよ、とか、やめておけ」と口で言うのは簡単ですが、実際に現場がその対応を行うことの手間・コストとか、会社にどれくらいの利益をもたらす案件なのか等の観点も重要で、そのあたりのバランスを取りながら現場と二人三脚でやっていく必要があり、この点は大変難しいです。ただ、先ほど話したとおり、この難しさが面白味だという側面もあります。

今後どう活動していきたいと思っていますか

まずは会社のことをもっとよく知りたいと思っています。各部門の方々、現場の方々がどのようなプロセスでどのような仕事をしているのかを知らなければ、実のある内部統制システムなど作れないでしょうし、「どの口が『現場に近い位置で』とか気障なこと言ってんだ」ということになってしまいます。ですので、積極的に色々な仕事に関わって、会社についての知識を身につけ、社内の人脈を広げていきたいです。

また、弁護士としてどうやって会社に貢献していくかということも考えていきたいです。もちろん、法律知識を十分に活かすことが第一なのですが、知識という観点だけなら、法科大学院を修了した方でも十分な知識を有しているでしょうし、法務歴の長い方の知識の質・量には日々驚かされています。知識面以外で、弁護士資格をどう活かすかということが、今後の私の課題ですし、弁護士登録をしているインハウス全員の課題なのではないでしょうか。

弁護士資格の活かし方という話が出ましたが、法務部に勤めるにあたって、弁護士資格を有しているのと有していないのでは違いがありますか

強いて言うなら、頼られ方が変わってくるのかなと思います。役員や上司から質問されることや意見を求められることもありますし、「気軽に相談できる弁護士がいて心強い」と言ってくれる現場の方もいます。あまり良いことではないですが、私の言うことに異論ばかり唱えていた方が、弁護士であると知った途端、別人のように話を聞いてくれるようになったという経験もあり、信頼のある資格なのだなと思わされました。

「違いがあるか」という問いに対する答えではないかもしれませんが、最後に少し良い話(?)をしようと思います。司法試験に合格できるだけの知識・論理性や、司法修習で得られる知識・経験・人脈は、法務部門における業務に必ず役立ちます。企業の法務部門を志望している方の中には、司法試験合格に重きを置いていない方もいるのかもしれませんが、ぜひとも司法試験合格を1つの目標にして勉強し、合格後は司法修習に行ってほしいと思います。

将来何がどういうふうに役立つのかは、実際にその将来になってみないと分かりません。私自身、法科大学院の授業で聞いたときには意味が分からず、「こんなことは試験にも実務にも関係ないだろう」と思って半分聞き流していた(先生方、ごめんなさい…。)ことが、今になって、極めて重要で基礎的なことだったのだと気付いたという経験が結構たくさんあります。法科大学院を志す皆さん、法科大学院生の皆さんは、こんな私を反面教師にして、「これは必要。これは無駄。」といった変な割り切りはせずに、しっかりと授業を受け、本を読み、色々な情報を吸収していってください。

お忙しい中ありがとうございました。さらなるご活躍を期待しております。

インタビュー実施日・場所:2016年5月16日 大和ハウス株式会社本社
インタビュアー及び記事編集者:松本優花里

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