法令改正から知財を支える

松田 誠司 さん

第4期修了生
特許庁総務部総務課制度審議室法制専門官・弁護士・弁理士

ご経歴
2002年 同志社大学法学部政治学科卒業
2009年 神戸大学法科大学院修了、司法試験合格、最高裁判所司法修習所入所(新63期)
2010年 弁護士登録、中之島シティ法律事務所勤務
2014年 弁理士登録
2015年 特許庁勤務(特許庁総務部総務課制度審議室法制専門官)、工業所有権審査会試験委員(弁理士審査分科会試験委員)

著書に『実務解説・職務発明――平成27年特許法改正対応』(共著、商事法務)等多数。

伊勢志摩サミットの開催を2日後に控え、中央省庁の集まる霞ヶ関でも厳戒態勢が敷かれる中、特許庁に勤務されている松田誠司先生にインタビューを行いました。
松田先生は、同志社大学を卒業後、神戸大学法科大学院の既修コースに入学・修了され司法試験に合格。その後、知的財産分野(産業財産権、著作権及び不正競争防止法等)を中心に扱う大阪の法律事務所での勤務を経て、特許庁において任期付き公務員として勤務されています。
現在、知的財産分野における法令の改正作業に携わっておられます。法律を使うだけでなく、創り出すという立場にもおられるという点で、皆さんが進路を考える上でも新たな知見を与えて下さるのではないでしょうか。

現在のお仕事の内容について教えてください。

現在、私が勤めている特許庁は、経済産業省の外局であり、産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権及び商標権)の審査及び登録等に関する事務をつかさどる国家機関です。この中で、私は制度審議室という常設の法令改正担当部署にいます。中央省庁の中でも「常設」の法令改正担当部署を持っている省庁は非常に珍しく、その意味で独特の機関だと思います。

業務内容は法令(政令及び省令等を含む)案の企画・立案等の改正作業のほか、必ずしも法律の専門家ではない特許庁内の職員からの法律相談(特許庁の事務に関するもの)に答えるというものもあります。

他にも審理員(行政不服審査法をご覧ください)の補佐業務や知的財産権制度の説明会の講師、改正内容の論文の執筆活動もしています。また、弁理士試験にも関わっています。 実は私も特許庁の職員になるまでよく知らなかったのですが、法制専門官というポジションは割といろいろな業務を担当しています。

現在のお仕事にどのような魅力を感じておられますか。


特許庁正面玄関

まず、私は、弁護士として主に知的財産分野を取り扱っていましたが、これは民法や会社法等と比較して、最高裁判所判例も少なく、未開拓の部分が少なくない法分野です。法解釈も確固たるものがない場合が多く、逆にいえば、多くの可能性を秘めた、発展の余地が十分にある魅力的な分野であると考えています。

次に、現在の仕事についてですが、普通、法律家は個別の事案を処理するために法律を解釈・適用するという作業を行います。一方、現在私が関与している法令の改正作業は、個別の事案の解決のための作業ではなく、一般的なルールの策定に関するものであるため、社会全体への影響を考えなければなりません。場合によっては、日本のみならず、海外諸国との関係も考慮します。

法律が変わるというのは社会に大きな影響を与えるので、相応の責任を伴います。また、立法の過程においては政治的な利害調整も要求されるので、個別の事案において法律を解釈・適用するというときにはない難しさもあります。

しかし、より良い制度を作ることは社会の発展にもつながることを意味しますので、とてもやりがいがあります。

また、立法過程においては国会等に向けての調整が不可欠となります。立法にあたって議員の方々に法制度や改正案の内容を説明するということもしなければなりません。さらに、国会審議においては、答弁者の補助のため国会の議場で待機します。このような仕事をする機会はなかなか無いと思うので得難い経験をしていると感じています。

将来どのような方面に仕事を進めていきたいですか。


平成27年特許法改正において構造が
転換された職務発明制度についての解説書
松田さんも執筆陣に名を連ねる

特許庁での任期を終えた後は、弁護士として知的財産分野を中心に取り扱っていきたいです。さらにいえば訴訟をする弁護士でいたいと思っています。訴訟代理人として法廷で訴訟追行するという経験を積むことが、翻って、日々の企業活動の中でのリスク回避(予防的法務)について的確なアドバイスができるようになるということにつながると考えているからです。

そして、ある分野について「ここについては松田が一流だから」と信頼して仕事を任せてもらえるような弁護士になりたいと思います。
また、論文の執筆など世間へ発信する仕事も積極的にしていきたいと考えています。

神戸大学法科大学院で学んでよかったこと、今でも役に立っていることはありますか。

結論から申しますと、神戸LSに入ってすごく良かったと思っています。今は法科大学院を修了することが司法試験を受験するための要件となっていますが、個人的には、受験資格要件となっていようがいまいが、神戸LSで勉強することは将来につながると思っています。

理由は2つあります。
まず、1つは先生方が非常に熱心で、かつ、質の高い指導をしてくださるという点です。基礎的な部分から、その法分野の先端事項まで取り扱っていただきましたが、実務家となった今から思い返しても非常に充実した教育体制だったと思います。

もう1つは、いい意味での競争が神戸LSの中にあったという点です。神大には、学習に対する意識が高い学生がたくさんいました。このような環境にあったからこそ私も実力が伸びたと感じています。

次に、神戸LSで学んで今も役に立っていることについてですが、これは、それぞれの法律を深く理解するための思考訓練ができたことだと思います。この訓練のおかげで法律を扱う仕事をするための土台を作ることができたと考えています。

例えば、行政法の授業では裁判例をたくさん読みました。裁判例を理解するというのは実務家の基本ですが、授業では事案の概要の把握から始まって、規範、あてはめと1つ1つの裁判例の論理を理解できるよう精読をしていました。法律学を修得するためにはたくさんの裁判例をきっちり読むというのが一番いい勉強法だと考えています。神戸LSの授業ではこれをやってくれていました。

また、ロースクールでは学説の対立について考えたり、あるいは同種の事案における裁判例を比較したりすることも多いと思います。これは必ずしも実務での事案処理に直結するものではありません。しかし、このような深いところからの思考訓練を繰り返すことで、実務家として生きていくための基礎体力が養われたと思います。

最後に神戸大学法科大学院で勉強している後輩やこれから法科大学院への入学を考えている方へのメッセージをお願いします。

まず、法科大学院への入学を考えている皆さんに対して申し上げますと、昨今、弁護士に対する世間からの風当たりは強くなっているといわれます。しかし、弁護士は大いにやりがいのある仕事、可能性のある仕事だと思います。そして、神戸LSに入るというのは、私個人としては正解だと思います。神戸LSに入って勉強すれば法律家としての素養は身につくはずですから、希望をもって頑張ってほしいと思います。

次に神戸LSの後輩たちに一言。実務家として仕事をしていくには法的思考についての基礎体力が必要です。神戸LSにはレベルの高い学生が集まっていて学習意欲を刺激してくれますし、質の高い教育も受けられます。基礎体力をつけるには非常に良い環境です。

ぜひ、一生懸命勉強していただければと思います。

ありがとうございました。さらなるご活躍を期待しています。

インタビュー実施日:2016年5月24日
インタビュアー及び記事編集者:艸場傑

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