倒産法務と渉外法務のやりがい

田子 小百合 さん

第5期修了生
アンダーソン・毛利・友常法律事務所・弁護士

ご経歴
2007年 慶應義塾大学法学部 卒業
2010年 神戸大学法科大学院(未修者コース)修了
2011年 司法試験合格、最高裁判所司法研修所入所(新65期)
2013年 ビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所に入所
2015年 統合により、アンダーソン・毛利・友常法律事務所に入所

所属
東京弁護士会
東京弁護士会倒産法部

法科大学院修了後、現職に至るまでの経緯を教えてください。

神戸大学法科大学院の未修者コースを修了し、司法試験合格後、東京での司法修習を経て、ビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所(外国法共同事業)に入所しました。その後、2015年4月、経営統合により、アンダーソン・毛利・友常法律事務所に入所しました。
現在は、弁護士4年目のアソシエイトです。

今のお仕事を選択された動機やきっかけを教えてください。

私はイギリスに5年間住んでいた経験があり、海外の人とコミュニケーションを図る仕事をしたいと思っていました。また、いわゆる渉外法務に関心があったため、外資系の法律事務所や海外関係の案件を多く扱う事務所に就職したいと考えていました。他方、日本の弁護士として働くので、日本での基盤が強い事務所で働きたいとも思っていました。

ビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所は、日本での基盤も整っており、かつ、世界中に事務所があって、グローバルなネットワークもあるので、私が思い描いていた法律事務所のイメージと一致していました。また、ビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所には、ロースクール1年次にTA(注:ティーチング・アシスタント。未修者コースの3年生が1年生に対し、学習のサポートをする)としてお世話になった方が勤務されており、その方から色々なお話を聞いたことや、事務所のネーミングパートナーの人柄に惹かれたこともあって、入所に至りました。

現在のお仕事の概要はどのようなものですか。

インタビューの様子

時期によっても異なりますが、現在は、渉外法務が5割、倒産法務が4割、その他(顧問相談など)が1割、といった感じです。

渉外法務では、日本企業による海外企業の株式取得や事業の譲受け等のM&Aの案件や、海外企業が日本の独占禁止法違反で課徴金納付命令を受け、不服を申し立てたケースで、現在公正取引委員会で審判中の案件、さらには、海外企業と日本企業との間の様々な契約書の作成・アドバイス等に携わっています。

倒産法務では、企業やその代表者の破産申立て、破産管財人の補助業務、民事再生関連案件、破産手続や民事再生手続等における債権者側の代理などをしています。破産管財人の補助業務では、破産会社の事業やその他資産を換価することで、破産者の財産を債権者に公正・平等に配当することや、労務関係の処理(従業員に対する未払給料の支払の対応等)などに関わっています。また、これは渉外法務でもありますが、国際倒産の案件も扱っています。国際倒産というのは、日本企業が、倒産や民事再生等の法的整理を申し立てた場合等において、海外にも子会社や資産を有しており、海外でも法的手続の申立てを行うケースや、当該法的整理等における債権者が海外企業であるケースなどであり、日本企業の海外における法的手続の申立ての支援や、債権者である海外企業を代理するような案件を扱っています。

現在のお仕事にどのような魅力を感じていますか。

執務室にて

倒産法務の仕事に一番顕著な魅力を感じています。倒産法務では、時として、倒産寸前という状況の会社を突然訪問し、限られた時間の中で代表者や従業員の方々とコミュニケーションを図り、協力して再建の可能性を含め今後の方針を検討することになります。そのような中で、一生懸命検討した再建案について債権者等の理解を得られたときや、倒産を回避することができたときには、会社の事業や従業員の方々を守ることに貢献できたと感じ、大変やりがいがあります。仮に倒産することになった場合であっても、大切な会社資産を有効活用してくれるところに売却したいと願う会社の方々の気持ちを叶えることができたときには、やはりやりがいを感じます。また、代表者や従業員の方々とのコミュニケーションを通じて生の声を聞くことができる点や、当該会社やその事業に毎日向き合い、様々な会社やその事業を深く知ることができる点にも魅力を感じています。

渉外法務については、例えばM&Aの案件で、デューディリジェンス等を通じて、様々な対象会社について調査し、深く知ることができるという点で面白いと感じています。

また、M&Aでは、日本企業が海外企業を買収する場合など、海外の法律事務所の弁護士と協働して案件を進める必要がある場合も少なくなく、海外の弁護士とのコミュニケーションを通じて現地の法制度やビジネスの実務・慣習に対する理解が深まっていく点にも魅力を感じています。

お仕事で苦労されていることは何でしょうか。

倒産法務では、弁護士1年目でも、一人で現場に行かなければならないことが多くありました。経験もまだあまり無い状態で、現場の従業員の方々が抱えている問題を処理する等、自分で考えて即座に対応することが求められることが多く、苦労しました。破産管財人の補助業務では、破産手続開始の直後など、一日中債権者や取引先等からの電話が鳴り続き、その対応を求められたりと、大混乱の状態になるので、最初は大変でした。ただ、生の声を聞くことができる貴重な機会でもありますし、常に自分で考えて対応を行わなければいけない点で同時にやりがいもあります。

また、M&Aや倒産、税法、金融商品取引法など、ロースクールでは全く勉強していない法律・分野も日常業務においては多く扱うので、最初は全体像が見えないこともあります。未知の分野について、一から考えて、事実関係を整理し、結論の妥当性を先輩弁護士と議論するなど、これらは苦労する点でもありますが、他方で魅力の一つでもあると思っています。

神戸大学法科大学院で学んだことは実務でどのように役に立っていますか。

一つ目は、新しい法的問題が出てきた時のアプローチの仕方についてだと思います。具体的にいえば、法科大学院では、予習していることを前提に、皆で議論して妥当な結論を導いていくというソクラテスメソッド形式の授業が大半でした。実務では、未知の法的問題が日々生じるので、それについて、まず自分で文献や裁判例を調べた後、事実関係を聞き取り、先輩弁護士と議論して妥当な結論を出していくということが毎日のように求められます。このような未知の法的問題に対するアプローチは、法科大学院で学んだ基本姿勢と共通するので、法科大学院で学んだことが役に立っていると思います。

事務所受付

また、導いた結論を言語化・文章化する際にも、法科大学院で学んだことが役に立っています。授業での議論は、どのように言えばわかりやすく伝わるのかを考え練習する機会になりましたし、文章についても、自主ゼミなどを通じて、人に伝わりやすく書くためにはどうすればよいかを学ぶことができました。

もう一つは、密な人間関係を形成できたことだと思います。特に、教授の先生方とは、オフィスアワーや授業後の質問などをさせてもらい、親身になってご指導いただきました。また、法科大学院の友人は自主ゼミなどを通じて密な時間を過ごした仲間ですし、現在でも時折会って互いに刺激を受けています。

5年後又は10年後のご自身の将来像をお聞かせ下さい。

今後はまず留学を検討しています。海外のロースクールで学んだ後、海外の弁護士資格を取得し、現地の法律事務所で研修したいと考えています。留学後は、専門性をより高めて、5年後又は10年後には、倒産法務(国際倒産も含む)とM&Aを両柱とする弁護士になりたいと思っています。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所では、倒産法務やM&Aの案件は基本的にチームで扱っていますが、将来的には、チームのリーダーとして重要な役割を担っていきたいと考えています。

これから法科大学院に進学しようと考えている人に向けて、メッセージやアドバイスをお願いします。

事務所ビル下の花壇にて

上記の法科大学院で学んだこととの関連でいえば、新しい法的問題へのアプローチの仕方や密な人間関係などは、予備試験ルートではなかなか得るのが難しいものだと思います。また、法科大学院では、実務家の先生のゼミや授業を通じて実務家の方々と触れ合う機会も多くありますし、修了生と接する機会もあると思いますので、これらの機会を積極的に利用してほしいと思います。

司法試験合格は第一の目標ではありますが、関連する周辺分野について学んでおくことも重要だと思います。実務では法科大学院で勉強したことがない分野もよく扱うので、全く知らない場合だと全体像がみえずに苦労します。可能な範囲で在学中に少しでも幅を広げて勉強しておくと、後々の実務で非常に役に立つと思います。

また、就職活動とも関連しますが、法律の勉強だけでなく、少しでも人と違うことをして、プラスαの価値を身に着けておくのも良いと思います。神戸大学法科大学院では、海外の法律事務所でインターンシップをする機会等、様々なチャンスがあると思いますので、積極的に利用してみると良いと思います。

私自身まだまだ未熟でありますが、今後さらに成長したいと思っております。法科大学院に進学しようと考えている皆様と、どこかでお仕事をご一緒させていただける機会を楽しみにしております。

ありがとうございました。さらなるご活躍を期待しています。

インタビュー実施日:2016年6月3日
インタビュアー及び記事編集者:田ノ内 宏平

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